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Torrens Dental Clinicの岸本先生が紹介する歯についての正しい知識。オーストラリアと日本の違いについてもよく分かる。

岸本 整子 (Yoko Kishimoto)
日本とオーストラリア双方の歯科医免許を持つ歯科医。アデレード大学院修士課程も修め、prosthodontics というスペシャリストの免許も所有。1994年にアデレード郊外KilkennyにTorrens Dental Clinic を開業。子どもから大人まで幅広く丁寧に治療がポリシー。
www.torrensdentalclinic.com.au

前回は水道水フッ化物添加法についてお話ししましたが(「アデレードの飲み水について』参照)、さて、フッ素というのはどうして虫歯予防になるかと言いますと、大まかには3つの働きが考えられます。

1)歯のエナメル質というのはハイドロキシアパタイトという結晶でできているのですが、 フッ素の影響で結晶中のミネラルが入れ替わりフッ素入りの固い結晶に代わります (結晶性の向上)。

2)ムシ歯菌への抗菌作用 それに伴う酸の産生および歯垢形成の抑制

3)初期ムシ歯の修復(レミネラリゼーション)

フッ素は子供だけでなく大人のムシ歯予防にも効果的です。
また、水道水フッ化物添加法のほかに歯磨き粉にフッ化物を入れる
のも主な方法です。

前置きが長くなりましたが、歯磨き粉の日本とオーストラリアのちがいについてお話ししていきます。

まず一番に違う点は 日本の歯磨き粉には『フッ素入り』と書いてあるだけのものが多く濃度がはっきりしないという点です。

かれこれ25年ほど前の話しになりますが、わたしは大学時代に歯磨き粉の中身として何が入っているのかリサーチをした事があります。その頃には一般的に手に入る日本の歯磨き粉の全部にフッ素がまったく入っていませんでした。

日本はその後も永く、歯磨き粉にフッ素を添加することについての関心がかなり低かったですし、入っていてもフッ化物濃度も低いものが多かったようです。しかし、 現在日本では フッ素入りのものが主流になりつつあり、わたしが今回調べた範囲では、日本製の歯磨き粉で『フッ素入り』と書かれている歯磨き粉にはフッ素含有量は800−1000ppm程度の濃度で入っているものが多いようです。さらに調べてみると、日本では上限が1000ppmと定められているようです。

一方、オーストラリアの歯磨き粉にはフッ化物の濃度がしっかり表示がされています。大体が大人用ならフッ化物濃度1000ppmというあたりなので、これは日本とオーストラリアにおいては似たようなフッ化物濃度に当たるでしょう。

それではどこがオーストラリアと日本で違うのかというと 第一にオーストラリアでは、ムシ歯の率が多いハイリスクな人々のためにフッ化物が5000ppm(ふつうの歯磨き粉の5倍)まで入っている歯磨き粉が薬局で買える事です(スーパーマーケットでは買えません。それから歯科医の管理のもとでの使用のみです)。第二に、6歳以下の子供用には子供用歯磨きがあるところは日本と一緒ですが、オーストラリアの子ども用歯磨き粉にはフッ化物の濃度が大人用の半分ほどになっています。一方、日本では子供用でも『フッ素入り』歯磨き粉には1000ppm近い濃度のフッ化物が入っているようです(ただし製品によって異なりますし、濃度表示がされていない事が多いので一概には言えません)。

どうしてこちらでは子ども用は半分だけの濃度になっているのでしょう?

忘れてならないのが、前回お話しした通り、アデレードの水道水(概してオーストラリアの水道水も)の中には約1ppmのフッ化物が入っている事です。もう既にある程度の微量のフッ化物がバックグラウンドとして働いているのことになるので、歯磨き粉を通してのフッ化物はたくさんはいらないことになります。

前回お知らせしたように、体が歯冠をまだ作っている段階(1歳から3歳ごろまで)でフッ化物を採りすぎると斑状歯(フッ素症)という歯になる事があります。この斑状歯の歯質自体は頑丈で支障はないのですが、ひどいケースだと茶色い斑点が入った歯になる原因になることがあるので(見た目が悪い)、 もしお子さんが未だうまくうがいができないで水と歯磨き粉を一緒に飲み込んでしまう場合は、フッ素入りの歯磨き粉をつけないか、あるいは『本当に少量』(*) つけるだけで歯磨きするのが良いという事です。

ちなみに、オーストラリアの子ども用歯磨き粉は、子どもが誤飲しないようになるべく日本のようなイチゴ味やバブルガム風味、お菓子のような色などはつけないようにしています。チューブも仮に全部食べてしまっても大丈夫なように小さなチューブになっています。

どちらにしても虫歯予防で大切な事は、正しい知識をもった大人が監督のもと行う事であって、歯磨き粉は単なる一つのヘルプでしかないという認識を持つ事が必要です。

(*) なかなか『本当に少量』も分かりにくいのですが、日本では『切ったつめ程度』と説明しています。 これはとてもうまいこと表現していると思います。

(参考)日本歯科医師会情報ページ:https://www.jda.or.jp/park/prevent/index05.html

    オーストラリア歯科医師会(ADA)情報ページ:http://www.ada.org.au/Your-Dental-Health/Children-0-11/Fluoride