<アデレードのことならおまかせ!>

早坂洋司
工学博士。1980年代に家族と共にオーストラリアに移住。現在オーストラリアワイン研究所でSenior Research Scientist として勤務。
趣味はワインを飲みながら藤沢周平を読むこと。2005年に生物学でイグ・ノーベル賞受賞。

Tradition and Technology
ワインを友に哲学を語り従容として毒杯を仰いだソクラテス、ラインガウのワインを愛したゲーテ、ブルゴ ニュのワインを戦火でも離さなかったナポレオン、ボルドーワインを英国から取り返したジャンヌ・ダルク、シャンパン風呂で肌を磨いたマリー・アントワネット。ヨーロッパワインは長い歴史を数多くの物語と共に歩んできた。さらに伝説のブランド・シャトー・ヴィンテ ジ・ワインメーカー・フレイバー、そして幻のワインなどなど、ヨーロッパワインを開けると伝説とロマンの香りが次々と飛び出してくる。物語性とロマンの香りは長い歴史で培われたワイン造りの伝統技術と共にヨーロッパワインの大きな財産である。

オーストラリアワインの歴史は200年と短い。ネッド・ケリーがワインを愛飲した話は聞かない。オーストラリアワインの物語性とロマンは、短期間に世界有数のワイン生産・輸出国になったワイン産業の挑戦とサクセスストリーの中にある。オーストラリアは最も技術革新が進んだワイン生産国と言われている。収穫の機械化、ワインメーキングの各段階の管理・最適化,酵母の選択と改良、微生物・化学汚染の防止、栓の改良・・・とヴィンヤードから店頭に並ぶまでの各工程を産業と研究機関が一体になって検証し改良してきた。このInnovationを積極的に受け入れる風土が、世界に認められたワインを作り出す原動力になっている。

Wine old world (ヨーロッパ) とnew world(豪州・米国など)間の凌ぎ合いはTradition & Technologyの戦いともいわれている。New worldがTraditionにこだわれば、コピーしている限り本物を越えることが出来ない道理でワイン二流生産国に甘んじなければならない。Old worldがTechnologyにこだわれば、ワイン造りの自由度と合理性が増すかもしれないが、伝説とロマンの香りは希釈されるだろう。どちらの陣営も「お客様は神様」が求めるワインをいかに造るか切磋琢磨しているわけだ。

余談だが、嫁さんがMade in Japanより Franceや Italy の香水やバックを買うのは、まずは亭主の稼ぎと相談して欲しい。