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今こそ日本研究を

アデレード大学助教授
米山 尚子(よねやま しょうこ)

5人のノーベル賞受賞者を輩出し、その長い歴史と研究実績からオーストラリアの主要8大学で構成する'Group of Eight'の一員でもあるアデレード大学。米山さんはそのアデレード大学で「日本語」と「日本・アジア研究」を教えながら、自身の研究の成果を著書や論文としても発表し続けている。

日本語ブーム
アジア、そして世界の中の「日本」米山さんがアデレードに来たのは1989年。当時、日本はまだバブル経済の最中で、オーストラリアでは日本語ブームが起きていた。毎週のようにオーストラリア紙に日本語教師の募集記事が掲載され、日本語教育関係者が新しいポジションを求めてオーストラリア中を動き回っていた。その頃、米山さんはラトローブ大学の博士課程で社会学を専攻中だったが、機会を得てアデレード大学に赴任。以降、当初は「日本語」を中心に、その後は「アジア研究」も含め、今日まで22年間に亘って教鞭をとり続けている。 

 

アジア、そして世界の中の日本

米山さんが研究し、教えている「日本・アジア研究」の主な分野は「教育」と「環境開発」。日本が戦後の発展過程で経験した水俣病などの公害問題や、今も続く「いじめ」や「不登校」などの教育問題について問題意識を持つ。日本社会の「生きづらさ」に焦点を当てつつ、「より生きやすい社会のビジョン」を探る。

日本の意味をアジアで問う  

戦後の日本の近代化では、公害問題などの「負の遺産」も多く生まれたが、米山さんは「日本の過去50-60年の発展の中にアジアの将来が見えます」と語る。近代農業のひずみなど、現在アジアで進行中の問題も、日本を映すことで未来の視点で考えることができるという。「日本はアジアの国々にとってモデルであり、反面教師でもありますが、それ以上に、“プラスα”のことを示唆できる大切な存在なのです」。 さらに、米山さんは「世界全体が西洋発の考え方に浸かる中、新しいものを入れるとしたら東洋的なもの」と語る。宮崎駿監督のアニメに凝縮して描かれているような独特の伝統文化や価値観、自然との関係、美的センス、日本発の「知恵」など、今、日本が世界に発信していけるものはいろいろある。「震災後の今こそ日本研究が役に立つんです」。

 

出会いを通して

アデレード大学で教鞭をとり始めてからこれまでに数多くの学生と関わってきた。米山さんとの出会いに影響を受けた人は、直接講義を受けた学生はもちろん、研究成果などを媒介とした人も多い。「私の知らないところで自分の書いたものが広がっていって、またこちらに帰ってくることがあるんです」と語る。

実はそんな米山さんがオーストラリアに移ったきっかけは、当時ラトローブ大学で社会学を教えていた杉本良夫教授との出会いだった。オーストラリア政府はオーストラリア研究の普及のため日本に大学講師を派遣していたが、米山さんが当時通っていた大学を訪れたのが杉本教授だった。その講義に魅せられて「杉本先生について社会学を勉強する」と決心し、ラトローブの大学院に入学したという。「人って出会いで回っていくんですね。今もいろんな出会いに支えられています」。

多忙な毎日を送りながらも「贅沢な仕事です。好きなことを研究させて頂いています」と語る米山さん。大学で教えるという立場から、人々との出会いを通して、「日本」をアジアに、そして世界にこれからも発信していく。

 

米山 尚子さんプロフィール

http://www.adelaide.edu.au/directory/shoko.yoneyama 

取材:2011年12月