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世界に通じる技術

義肢装具士
大谷 洋史(おおたに ひろし)

義肢装具士としてノースアデレードのWomen's and Children’s Hospitalに勤務する大谷さん。義肢装具士とは、義足や義手など失った体の一部の機能を代用する「義肢」、コルセットやギプスなど事故や病気などで障害を負った四肢の機能障害を軽減する「装具」を患者の体の特徴に合わせて作る、いわば職人的な仕事だ。

本当にやりたいこと
オーストラリア留学大谷さんが義肢装具士になることを考えたのは、日本の大学在学中の就職活動のとき。経営学を専攻し、地元の大手流通企業に就職が内定していたが、「本当にやりたいことをもう一度考え直そう」と、資格本を隅々まで読んで心に残ったのが義肢装具士だった。幼いころからプラモデルなど“モノづくり”が好きだった大谷さんは早速、日本に数少ない義肢装具士の専門学校を地元に見つけて見学に出かけた。「やっぱりやってみたい」。そう確信した大谷さんは両親を説得。その後3年間通った専門学校では、人体生理学、材料学、歩行分析など、これまでの文系の枠を超える新しい知識の習得に苦労も多かったが、義肢装具士になりたいという強い気持ちで卒業。義肢装具の製作会社への就職を成功させた。

現在勤務するWomen’s and Children’s Hospitalでは、生まれつき障害のある子ども向けの装具を主に製作する多忙な日々を過ごしているが、子どもの患者を診ることになったのは偶然で「あまり経験がなかったので、正直最初は自信がありませんでした」。子どもの体は柔らかいため、矯正して固定するのが難しい。また、装具は大人でも3 ずれたら適切な効果が得られなくなると言われており、体が小さい子どもの場合、1.5 2 のずれも許されないことになる。  

 

オーストラリア留学
海外との出会いは高校生のとき。シドニーでのホームステイをきっかけに海外に魅せられ、大学時代は様々な国に出かけた。その後も「いつかは海外で」と漠然と考えていた大谷さんは日本の会社に三年間勤務した後、オーストラリアで唯一、義肢装具学科を有するメルボルンのラトローブ大学への進学を決意。半年間の語学学校を経て、ラトローブ大学に編入、義肢装具の知識を一年間学んで学士号を取得した。

技術を活かしてそんな中でも「モノづくりが好きだから苦ではありません。患者さんの型を石膏でとり、出来上がった形をイメージしながら、装具の形にしていく。イメージ通りに作れて、実際にフィッティングでうまくいったときには大きな喜びですね」。 

 

技術を活かして
「10年で半人前」と言われる義肢装具士の世界。大谷さんはこれからもっと自分の技術を高めていきたいと考えるとともに、「日本の義肢装具士に、オーストラリアで活躍する機会があることをもっと知って欲しい」とも。「日本人が作った義足は床に立つ」といわれ、技術レベルには定評がある日本だが、現場はどちらかというとビジネス的。一方で、オーストラリアは義肢装具士という仕事の位置づけが確立し、本当に良いものを作ることにより専念できる環境がある。「義肢装具士は日本人が海外でもやっていける世界なんです。多少英語がおぼつかなくても、私たちの技術は世界に通用するし、助けになるはずです」。

 

取材:2011年9月